タイトル:「ワンほれっ!チビ太郎君!」
設定・シナリオ制作:田島聖司(2003)



物語の構成
<テーマ>
犬の目から見た日本の世の中を見る。
犬の会話があり、実写で表現する。また、コンピュータで画面の特殊な動きなどをつくる。
ほのぼのとした、人間の子供達と犬の愛情のふれあいをやさしさを語り、生きることとは何かを学ぶ。

<出演する人と犬の設定>
チビ太郎:緑川家からゆずってもらったオス犬。やんちゃで、弱虫な性格でおまけに、わがまま。
ミッチ:チビ太郎の恋犬。お茶目で、おしとやかな性格。つきまとうゲン次郎を嫌っているメス犬。
ゲン次郎:ヤクザなオス犬。
里野 純一:チビ太郎の飼い主。小学校5年生。メガネをかけた、マンガ好き・動物好きの少年。
里野 洋二:純一の父親。建設会社のサラリーマン(営業の仕事)。
里野 鈴奈(りんな):純一の母親。張り切りママで、昼間はママさんテニスクラブに励んでいる。
里野 美華子:チビ太郎の2番目の飼い主。純一の妹で小学3年生。おちょこちょいだが、しっかりしている。
ナレータ:犬の神様。人間で言うと大人の男の人の声で語り、チビ太郎をずっと見守りつづける。
緑川家の犬たち(母犬と、子犬5匹、家の外で飼われている犬)
緑川 えり:小学校2年生の女の子。世話好きで、明るい普通の子。

<物語の背景や、周りの人々とか街の特徴>
緑川家
  横浜の一軒家。犬は柴犬か日本犬で、色はキツネ色。家族4人で暮らしている
里野家
  東京都・下町の一軒家に里野家が住んでいる。
  洋二は東京都の建築会社に務める。
  町内に、意地悪なオス犬、ゲン次郎がいる。
  チビ太郎の恋人、ミッチ(家の外で飼われている。色は白)が隣の家にいる。




1.ママ・・・ボクどこへ行くの?

一軒家(緑川家)
  犬小屋と母犬、周りに子犬5匹。
ナレータ「私は、犬たちの神である。全ての犬たちの一生を空から見てきた。お金で買われたもの。飼い主に捨てられたもの。保健所で殺されていくもの。すべてのもの達の生き様を長い年月を越えて見守ってきた」

母犬の周り
  子犬たちがじゃれ合っている。
  チビ太郎だけが、ちょこんとお座りしていて母犬の前で。
チビ太郎「ママぁー。なンで人間のご主人様はボクらを、ワンコロちゃんと指さして言うの?ワンコロって何?」
  母犬、チビ太郎の首を加えて、自分の方に・・・。
母犬「ワンコロはね、犬のことをいうの・・」
チビ太郎「(首をかしげながら)イヌ?どうしてイヌがワンコロって呼ぶんだろう?」
母犬「それはねっ。ワンワンと吠えて、コロコロしてるからなの」
チビ太郎「んー。ちょっとボクにはわかんなんない」
子犬1「(チビ太郎に向かってハァハァいいながら)おい。ママと何をはなしてたんだ?」
  子犬1、チビ太郎とじゃれあう。
  母犬の周りを、走り回る子犬たちの場面がつづく・・・。
チビ太郎の語り「ママはあったかくて、いい匂いがする。おっぱいのにおいかなあ・・?ママはけっして、怒ったりしないんだ。ただ、人間の乗る車の方に行こうとすると、怒鳴られる!その時以外は、やさしいママだ」

一軒家・玄関から
  小さな、女の子(緑川 えり)が大きいナベを持ってきて、子犬たちのご飯入れにあたたかい食べ物を入れていった。
  母犬、子犬たちを見ている。
  子犬たち、いっせいに食べ始める。
チビ太郎「ママはこのあたたかい、ごちそうをなぜだか食べない。けど、おっきな人間がでてきて茶色のコロコロしたビスケットみたいな物と、水を置いていき、ママだけはそれを夕方だけ一日一回、食べる」
  エサを食べる、子犬たちの場面が続く。

犬小屋・外で
  母犬は横になっている。
母犬の語り「(子犬たちを見守りながら)子供達は、乳離れをしてスクスクと大きくなっているワ。でも、いつかは別れの日が来ることを私は知っているから・・・。悲しくて・・・辛いけど・・・今はその時が来るまで、この子達をやさしく見守ってあげたい・・・。できるだけ、長く」

緑川家の外・(夜)

母犬と子犬
  母犬のふところに、5匹の子犬が眠っている。
ナレータ「日が昇って朝が来るまで、チビ太郎・・・お母さんのにおいを忘れてはいけない。旅立ちの日がすぐ、そこまで来ているのだから・・・」

街の夜景

*  *  *  

緑川家の庭・朝

母犬と子犬
  眠っている

玄関・外
  ドアを開ける。
  子犬たち、起きあがる。
  えりちゃんが子犬たちの食べ物をもってくる。
  走り寄ってくる子犬
子犬1「はらへった〜」
子犬2「今日はおいしそうなにおいがするワ!」
チビ太郎「ママぁ。ごはんがきた!」
母犬「けんかしないで、おあがり!」
子犬3・4「ハーイ!」
  エサ箱に走り寄ってくる子犬。
  容器に子犬たちの食べ物を移す、えりちゃん。

里野家の外

里野家・居間
  新聞を見ている純一。
洋二「犬の里親の記事、でているかい?」
純一「うん。横浜なんだけど車で行けそうだよ」
鈴奈「純一?オス犬がいいの?それともメス?」
純一「オスがいいよ!元気がいいし、力強いし」
洋二「いい番犬に、なってくれるかな?」
鈴奈「(純一の方を見ながら)飼い主さんしだいね!」
純一「・・・・・」
  朝食を用意する鈴奈。
鈴奈「ごはん、出来たから食べて」
  みんな、食卓につく。
純一「約束通りに、犬を飼ってもいいンだネ」
洋二「ちゃんと、犬の世話できるかな?」
美華子「お兄ちゃんなら、三日坊主よ」
  鈴奈、笑う。
美華子「だいたいね。お兄ちゃんはペットを飼う資格なンか、ないんだから」
純一「・・・・・」
美華子「なんか言ったらどう?」
純一「犬を飼うのはボクのライフワークだっ!」
  みんな、キョトンとする。
洋二「ライフワークなんて、おおげさだぞ!」
純一「本気だ!」
美華子「ふーん、そう」
  食事を続ける場面が続く。

里野家・玄関
  洋二・純一、出てくる。
洋二「じゃぁ、行ってくるよ」
鈴奈「向こうには、電話をしておいたから」
  車へ向かう二人。


  運転席を開けて乗り、助手席のドアを開ける洋二。
  車に乗る純一。
  エンジンをかけて、発進する。

車・中
  洋二、カセットをかける。
  ジャズの音楽が流れる。
純一「また、ジャズかよ〜」
洋二「うるさい!・・・それより、どんな犬をもらうんだ?」
純一「向こうについてから決める」
洋二「うーん。犬はだいたい、同じ毛並みの犬が生まれるんだ。だから、見た目でなく、おまえのフィーリングのあった犬を見つければいい」
純一「フィーリング?」
洋二「そう・・・。恋い人を見つける思いで・・・」
  音楽、流れて。

道路
  洋二の車が、インターチェンジに入っていく。
  車、横浜に向かう場面の積み重ね。

緑川家・犬たちの所
  えりちゃん、子犬たちと遊んでいる。
  そこへ洋二の車が到着。
  えり、子犬を抱いて立ち止まる。
  洋二・純一、車から出てくる。
  
緑川家・玄関
  洋二、呼び鈴を鳴らす
  ドアを開ける、緑川の妻。
妻「里野さんですか?」
洋二「ええ。今ついたんです」
  妻、出てくる。

緑川家・犬たちの所
妻「どうぞ、好きなのを、連れてってください」
  えり、抱いていた子犬を降ろす。
えり「コロコロしてて、かわいいでしょう?」
純一「どれがオス?」
えり「んーと・・・」
  オスの犬を見つけ、抱き上げる。
えり「この子が、オスなの。でも、他はみんなメスなんだ」
純一「えっ?一匹しかいないの」
  間。
チビ太郎の語り「この男の子、見たこと無い。どうして、ここにいるんだろう?ボクはいや〜な予感がした」
  間。
純一「いいよ!じゃあ、この犬をもらうよ・・・いい?」
えり「うん。はい!」
  えり、純一に子犬を渡す。
純一「かわいいなぁ・・・」
  喜ぶ純一の場面が続きながら・・・。
洋二「どうやら、子供達同士で決めたみたいです」
妻「大事に飼ってあげてくださいネ」
洋二「それはもう・・・でも、純一しだいですけど・・・」
  間。
チビ太郎の語り「そしてボクは、この男の子と別な場所に連れて行かれた。ママはボクが連れて行くのを引きとめようともしなかった。それより、ママの涙が気になり、この先が不安と恐怖に震えあがったボクだった・・・」
  1話エンディング「つづく」。



2.ママ・・・悲しいです。

里野家(夕方)・中
  食事をしている里野家
ナレータ「チビ太郎は、里野家という人間の家族にもらわれていった。私としては、チビ太郎が幸せにこの家で過ごすことを願っている」

チビ太郎ダンボール
  チビ太郎、ご飯を食べている。
チビ太郎「・・・これ、おいしい・・・」

里野家・食卓
  4人がテーブルに着き、食事している。
純一「名前はチビ太郎にしたいんだ」
洋二「チビ太郎?なンで?」
純一「親を見てても、あんまし大きくならなかったみたいだし、オスだから太郎と付けたかったんだ」
美華子「ふーん。オスにしたんだ」
純一「うん」
美華子「エサは?」
純一「飼い主さんから教えてもらったものを、与えてる」
鈴奈「一匹でさみしくないかしら・・・」
純一「・・・・・」
洋二「ご飯食べたら、さっそく散歩に連れってってみようよ」
純一「えっ?首輪とか、散歩用のロープ家にあるの?」
洋二「(椅子の下の紙袋から出しながら)じゃじゃじゃ〜ん!ほれっ!」
美華子「おおー」
純一「すばやい」
鈴奈「パパ偉い!」
洋二「昨日、会社の帰りに買ってきたんだ。極秘に・・・」

チビ太郎ダンボール
  純一、箱に向かって。
  首輪、ロープをつないで子犬を抱っこする。
チビの語「どこへ行くのだろう・・・」
  チビ太郎、外に連れられていく。

道路・夕方
  散歩する、純一。
チビ太郎「(ワンワンと重なって)たのしいー」
  よその犬の前を通り過ぎようとする。
犬「おい、コラッ!そこにションベンかけるな!」
チビ太郎「(首を重ねて)名前、何って言うの?」
犬「オレは、ゲン次郎と人間どもは言っている。だがなぁ、ここを通るときは後ろを気をつけな!」
チビ太郎「後ろ?」
ゲン「あぁ。ケツをガブリと噛みつかれたくなかったらなっ!」
  走り出す、チビ太郎。
  吠える、ゲン。
チビ太郎「ケン次郎とおともだちになれないかなぁ・・・」
メス犬「それは、むりよ〜」
チビ「えっ?」
メス犬「私はミッチっていうんだ。きみは?」
チビ「チビ太郎」
ミッチ「ふ〜ん。ありふれた名前」
  間
ミッチ「あそこのゲン次郎には、近づかない方がいい。よその犬が通るとすぐ吠えるし、散歩してても他に犬に噛みついたりする。だから、注意した方がいいよ!」
チビ「うんうん。なんか、怖そうな犬だね」
ミッチ「無視、無視」
チビ「いいこと教えてもらって、ありがとう」
  散歩の場面の積み重ね。
  家へ、帰る純一。

家・居間
  ロープをはずし、小屋の中に入れる。
  エサを与える、純一。
鈴奈「散歩、どうだった?」
純一「ちょっと、寒かったけど・・・チビが元気いっぱいでさぁ。近所の犬に吠えられてビックリしてるの・・・。隣の家に犬が飼っているんだね」
鈴奈「この辺は犬を飼っている家庭が多いから・・・。散歩にスコップと、フンを入れるビニール袋を持ったの?」
純一「わすれてたぁ〜」
鈴奈「ためよ。ちゃんとフンの後始末は飼い主さんがするものなの。いい?」
純一「わかった。今日は失敗」
鈴奈「本当に大丈夫?フンの始末・・・結構、大変よ!」
純一「・・・・・」
  間。
  洋二が帰ってくる。
洋二「ただいまー」
純一「(元気なさそうに)おかえり〜」
洋二「どした?元気、なさそうだけど」
純一「うん。犬を飼うのって結構、大変なんだなぁ」
洋二「まぁ、生き物を飼うことは全て、大変だ。わかるか?」
純一「・・・・・」
  テレビを見ている、美華子。
鈴奈「ごはん。できたわよ」
美華子「はい、はーい」
洋二「純一。まずは飯だ」
純一「・・・・・」
  テーブルに着く、一家。
美華子「(陽気に)いったっだっきま〜す!」
鈴奈「美華子。今日は元気ネ」
美華子「うん。体育の時間に100メートル走で学年新記録を取ったの」
純一「へぇー」
美華子「チビ太郎には、絶対に負けないから」
純一「チビはまだ、子犬だよ・・・。おおきくなったら絶対、ちびにまけるって」
美華子「・・・・・」
洋二「とにかく、チビ太郎は頑張って面倒をみること!」
美華子「お兄ちゃんがネ」
鈴奈「純一?」
純一「男の意地だ!やったるかぁー!」

*  *  *

家・中(夜)
  里野ファミリー、眠っている。
  クンクン鳴く、チビ太郎。
チビの語「(クンクン鳴きながら重なって)僕は、ママにもう会えないんだと思う。それがつらくて悲しくて・・・。僕だけ一人?・・・僕の飼い主さんは男の子らしいけど、ママがちゃんといるじゃぁないか?ご飯は同じ物だけど、美味しくない・・・。ママの匂いを嗅ぐこともできないから、食べる気がしない。でも、今日はお腹が減ったから食べたけどネ。・・・あぁ・・・みんな、どうしてるかなぁ・・・」